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先日、歯医者に行ったときのことです。

局所麻酔ですから、意識はもちろんあります。処置そのものは見えませんが、先生と助手の方の会話はよく聞こえてきます。

先生が、

「○○取って!」

すると助手の方が、

「えーと……」

しばらくすると、

「ここを持って。違う、これ!」

どうも先生と助手の方の意思疎通がうまくいっていないように感じます。

「あれ? 今日の私の処置って、さっき決まったばかりだったっけ?」

そんなことを考え始めると、だんだん不安になってきました(笑)。

さらに途中で、先生が助手の方に、

「この角度から写真を撮って!」

と指示しました。

ところが、どうもカメラの扱いに慣れていない様子。

とりあえず撮影したようですが、

「ピントが合ってないよ。もう一回」

もう一度撮っても、

「またピントが合ってない」

そして、

「オートフォーカスになってないじゃん」

こんなオチ(笑)。

助手の方からは、

「どうやってオートフォーカスにするんですか?」

という声まで聞こえてきました。

写真家としては、ここで余計に気になってしまいます(笑)。

最終的には別の方が呼ばれ、設定を変更して撮影していました。

もちろん、治療そのものについて私が良し悪しを判断できるわけではありません。ただ、一連のやり取りを聞いていて感じたことがありました。

「これ、事前に段取りしておけば、もっとスムーズに進むのでは?」

ということです。

「段取り八分、仕事二分」

昔から「段取り八分、仕事二分」といわれます。

良い仕事をするためには、実際に作業を始める前の準備が非常に重要だ、という考え方です。

私も会社員時代、トヨタ自動車で「自工程完結」という考え方に携わっていました。

その中でも大切にしていたのが、いきなり仕事を始めるのではなく、

「目的は何か」
「ゴールはどこか」
「そこへ至るためには、どんな手順が必要か」
「その手順に必要なものは何か」
「途中で何を確認すればよいか」

をあらかじめ考えることでした。

つまり、良い結果を偶然に期待するのではなく、良い結果になるためのプロセスを事前につくっておく。

これが「段取り」です。

今回の歯科医院でも、先生の頭の中には、おそらく処置の手順ができていたのだと思います。

しかし、その段取りが助手の方まで十分に共有されていなければ、チームとしての段取りができているとはいえません。

必要な器具は何か。

誰が何を担当するのか。

途中で写真を撮るなら、誰が、どのカメラを使い、どのように撮るのか。

そこまで共有されて初めて、「段取りができている」といえるのではないでしょうか。

自工程完結の考え方は、山登りに例えると分かりやすいかもしれません。

山頂というゴールを決めたら、どのルートで登るのか、何時間かかるのか、どんな装備が必要なのか、天候が崩れたらどうするのかを考えてから登り始めます。

何も考えずに「とりあえず登ろう」とはなりませんよね。

そして登り始めた後も、天候や体力を見ながら「このまま進んでよいか」を判断します。状況によってはルートを変えたり、引き返したりすることもあるでしょう。

ゴールを決め、そこへ至る道筋を考え、必要な準備をして、途中で状況を判断する。

これが「段取り」であり、自工程完結の基本的な考え方です。

写真も「出たとこ勝負」になっていないか

治療を受けながらそんなことを考えていたら、

「これって、写真も同じだな」

と思いました。

風景写真は自然が相手ですから、もちろんすべてを予定通りに進めることなどできません。

天候も変わります。
光も変わります。
霧が出るかもしれない。
予想していた場所に花が咲いていないかもしれない。

だからこそ、撮影に出かける前に考えておく。

晴れそうなら、どこへ行くのか。

霧が出たら、どこへ移動するのか。

雲がなく、空と地上の輝度差が大きくなりそうなら、ハーフNDフィルターを準備しておく。

日の出は何時なのか。

光はどちらから入るのか。

どの位置から、どの焦点距離で狙うのか。

そして何より、

「そこで自分は、どんな作品を撮りたいのか」

を考えておく。

これも立派な「段取り」だと思います。

準備するからこそ、想定外に対応できる

ここで一つ大切なのは、段取りとは「決めた通りにしか撮らない」ということではありません。

むしろ逆です。

事前に考えているからこそ、現場で想定外のことが起きたときに対応できます。

「予定していた光にならない」

「霧が出てきた」

「思っていた場所に被写体がない」

そんなとき、

「今日はダメだった」

で終わるのか。

それとも、

「では、この状況なら何が撮れるだろう?」

と次の手を考えられるのか。

その差は大きいと思います。

何も考えずに現場へ行けば、目の前に現れたものに反応するだけになってしまいます。

しかし、目的やゴールを考え、いくつかの可能性を想定しておけば、状況が変わった瞬間に次の選択肢へ切り替えることができます。

段取りとは、予定通りに進めるためだけのものではなく、予定外のことが起きたときに対応するための準備でもあるのです。

「なんとなく撮る」から「作品を創る」へ

写真は、偶然に助けられることがあります。

たまたま素晴らしい光が入った。

たまたま霧が出た。

たまたま鳥が飛んできた。

それによって素晴らしい一枚が生まれることもあります。

私は、その偶然を否定するつもりはありません。

しかし、作品づくりを「偶然待ち」だけにしてしまうと、いつまでも「出たとこ勝負」になってしまいます。

自分は何に惹かれたのか。

何を伝えたいのか。

そのためには何を画面に入れ、何を削るのか。

どんな光を選ぶのか。

どの焦点距離を使うのか。

どんなシャッタースピードで表現するのか。

そしてシャッターを切る前に、

「この撮り方で、自分が伝えたいことは本当に伝わるだろうか?」

と考える。

私は、こうした一つひとつのプロセスの中で作品の質をつくり込んでいくことが大切だと思っています。

会社員時代に学んだ「自工程完結」には、

「品質は工程で造りこむ」

という考え方があります。

会社員時代には仕事の質を高めるために向き合っていたこの考え方が、写真家となった今、作品づくりにもそのままつながっていることに気づきます。

撮った後になって、

「どうすれば作品になるだろう?」

と考えるのではなく、

作品にするために、撮る前から何をすべきかを考える。

仕事も写真も、やはり同じです。

良い仕事は、良い段取りから。
良い作品も、良い段取りから。

「段取り八分、仕事二分」。

撮影に出かける前に、

「今日は何を撮りに行くのか」ではなく、
「今日は何を作品として持ち帰るのか」

そんなことを一度考えてみると、いつもの撮影が少し変わってくるかもしれませんね。

私も改めて考えさせられました(^^♪

「撮る」から「作品を創る」へ。

作品づくりの考え方を体系的に学びたい方は、ぜひご覧ください。

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